その日、夜の26時を回った頃、アルヴィン6世側近クリフォード=ヴォルトンは
いつもアルヴィン6世が居る、フィオナ城の政務室のドアを叩きました。

クリフォード「アルヴィン様、居られますか?」
アルヴィン 「クリフォードか?入って良いぞ」
クリフォード「はっ」

アルヴィン6世は、大量にある国内の経済の報告書や、外交文書に囲まれた状態で
父親である、アルヴィン5世の頃から長年愛用されている、樫の木の机の椅子に座っていました。
入り口に居るクリフォードからは、山のようにつまれた書類のせいで、アルヴィン6世の頭頂部しか見えませんでした。

クリフォード「アルヴィン様、1ヶ月前からやり取りしているアルダスとの和平会議の件ですが、取付ける事が叶いましたぞ」

アルヴィン6世は、中腰に立ち上がって答えようとしましたが
同時に、書類の十何枚かがバサバサと机から落ちてしまったため
アルヴィン6世とクリフォードは、急いで書類を拾いながら会話しました。

アルヴィン 「そうか!よし、良くやったぞクリフォード!」
クリフォード「はっ、ありがとうございます、私のみの力では叶いませなんだが、外交部門の連中が良くやってくれました」

アルヴィン6世は、拾った書類を机の上でトントンと整え、言いました。

アルヴィン 「ええと、場所はあれだったな?国境境のアリング街だな?」
クリフォード「はい、あそこは両国唯一の共同所有地ですし、だだ広い平原と湖に囲まれておりますゆえ
       伏兵を配置するのも難しい場所ですから、最適かと思われます」
アルヴィン 「うむ、会議にはお前と、そうだな、まあ一応だが、ウィンセントにも同行してもらおう」
クリフォード「はっ、では、ウィンセントにそう伝えておきます、ところでアルヴィン様」
アルヴィン 「なんだ?」
クリフォード「差し出がましいかと思いますが、こう連日夜遅くまで政務をこなしていては、お体に触りますぞ」

アルヴィン6世は、笑って言いました。

アルヴィン 「何、問題ないさ、私はこう見えても屈強なんだ」
クリフォード「しかし…」
アルヴィン 「それに私は、早く父の思いを実現せねばならん。
       メリエル大陸から戦争を無くし、フィオナもアルダスも、ベリンダやザンティピーとも一体となった国。
       メリエル人になるという思いをな、その私がぐうたらでどうする」
クリフォード「アルヴィン様…分かりました、私は、誠心誠意仕えるのみです」
アルヴィン 「うむ、と言うかクリフォード、お前は私よりだいぶ年上なんだぞ、お前が休まずには私は休めんぞ」

クリフォードは、ギクッとしました。

クリフォード「は、はっ、これは失礼しました」

後日、クリフォードは、ウィンセントが隊長を務める、騎士団の第5隊宿舎を訪ねました。
クリフォード並びに王室の人々は、騎士団とは密接な関わり合いがあり
何らかの祭典があると、フィオナ中の人々と喜びを分かち合うため
王室と騎士団、またクレメンスと共に、総力を上げて街中の飾り付けや雰囲気作りをしたり
また、王室の戦略・戦術部門には、騎士団の知将達が多く入閣しており、そう言った人物も
普段から、王室と騎士団を行ったり来たりしているので、騎士達と王室の人物との間には、友情とも言える感情があります。

クリフォードも、若い騎士からは「おじいちゃん」と呼ばれて、親しまれています。
クリフォードは、その辺りに居た、第5隊の若い男の子の騎士に声をかけました。

クリフォード「あ、君、ウィンセント隊長はどこに居るか分かるかい?」
騎士    「あ、おじい…いえ、クリフォード様、ええと、多分食堂に居ると思いますよ、さっきお腹が空いたと言ってましたから」
クリフォード「そうか、ありがとう」

騎士団の中央食堂は、第1隊から第5隊まで共同で使用されており、豊富なおいしいメニューを、安価で摂れる事で親しまれています。
食堂の南東のテーブルに、2人の騎士と共に、第5隊隊長、ウィンセント=プレザンスは居ました。
180cmを超える長身に、細身ながらガッシリした筋肉を持ち、切れ長で全てを見通すような目は
歴戦の騎士と言う印象を容易に回りに与えています。
クリフォードは、とりあえずツナのサンドイッチとコーヒーを注文し、ウィンセントの居るテーブルに向かいました。

クリフォード「やあ、ウィンセント、調子はどうかい?」

ウィンセントは、大盛りのピラフにビーフシチューを食べていました。

ウィンセント「おおこれは、クリフォード様、ご無沙汰しております。
       ほら、バートランド君とディアナ君も挨拶しなさい」
ディアナ  「あ、すみません、クリフォード様、こんにちは」
バートランド「ゴブッ」
ウィンセント「どうしたバートランド君!」
バートランド「マジ、むせ…」

クリフォードは、持っていたコーヒーをバートランドに差し出しました。

クリフォード「ほれ、バートランド君、飲みなさい」
バートランド「ずみませ!助がりまず!」

クリフォードは、バートランドが落ち着いたのを見て、ウィンセントの隣に座り、話し始めました。

クリフォード「さてと、ウィンセント、今日は頼みがあって来たんだが」
ディアナ  「あ、私達は席を外しましょうか?」
クリフォード「ああ、いや、構わんよ、別に隠す事でもないよ」
ウィンセント「何でしょうか?何なりとお申し付けください」

クリフォードは、スーツの左胸のポケットから、折りたたまれた地図を取り出しました。

クリフォード「実は、今度アルダス王のウィリアム5世とアルヴィン様が
       ええと、どこだ、ここだ、このアリングで会談する事になってな
       私も同席するんだが、護衛のためにウィンセントにも同席してもらいたいんだ」
ウィンセント「なるほど、アリングですか、あそこなら比較的安全でしょうね。
       もちろん構いませんが、私が行く事で何か弊害と言うか、向こうを刺激する事はありませんか?」
バートランド「ウィンセント隊長マジ強いですからね」

クリフォードは、少し間を置いて話しました。

クリフォード「ふむ、一応考えたが、問題はないな。
       一国の王が共同所有地とは言え、道中を護衛なしで出歩く方が問題だし
       何より、向こうもベルンハルデを連れてくると明言していた」
ディアナ  「ベルンハルデ!」
バートランド「アルダスの最強騎士じゃないっすか!こええー!そりゃウィンセント隊長が行くべきっすよ!」
ウィンセント「ベルンハルデですか、彼女とは一度イエイツで対峙した事がありますが、正直私も恐ろしかったですね」
クリフォード「うむ、ただ、彼女に対抗出来るのは、現状セブンスナイト筆頭の君位だろうしね。
       まあもっとも、戦闘になる事は有りえないし、形の上での抑止力として同席してもらいたいんだ」
ウィンセント「分かりました、そういう事でしたら、ぜひ同行させてください」
クリフォード「ありがとう、会議は7日後の12月3日正午だ、ランチを摂りながらの会議となるよ」

ディアナは、ドキッとして言いました。

ディアナ  「えっ、ウィンセント隊長、食べ方結構汚いけど良いんですか?」
クリフォード「…」
ウィンセント「…」
バートランド「…」
ディアナ  「…」

そして、運命の12月3日が来ました。
アリングに行く馬車の車中で、アルヴィン6世は、クリフォードとウィンセントに言いました。

アルヴィン 「この和平会議は、絶対に成功させるぞ」
クリフォード「はい、和平が成立すれば…」

アルヴィン6世は、少し笑みを浮かべて言いました。

アルヴィン 「ああ、アルダスと和平出来さえすれば、多少強引な戦略にはなるが、アルダスと勢力を統合し
       ベリンダとザンティピーの両者とも、軍を動かす事なく、話し合える立場を作れるだろう。
       そうすれば、我々が一つに、メリエル人になるきっかけになる。
       時間は掛かるかもしれないが、父の思いを叶える第一歩になるんだ」
クリフォード「この会議は、メリエル史に残る出来事となりましょう」
ウィンセント「私のような若輩がそこに立ち会えるとは、光栄な事です」

そう話している内に、馬車はアリング街の入り口に到着しました。

御者   「馬はここまでしか入れません、私はここで待っております」
アルヴィン「ああ、ありがとう、帰りも頼むよ」
御者   「はっ、お気をつけて!」

アリングは、クリフォードが言った通り、広い平原と湖に囲まれた水の都で
大軍を配置するには目立ち過ぎ、また軍を動かすには湖が邪魔になるという地形にあります。
フィオナもアルダスも、水軍兵と言うものは持っていませんし、メリエル大陸は基本的に地続きで、陸地の占有量が海に比べて非常に大きいため
海戦に特化した軍を持つメリットは、陸軍に比べて小さく、また、海外から攻められた歴史を持たないため
海外の国と取引をする商船以外に、水軍を有する必要性は薄かったのです。
そのためアリングは、フィオナとアルダスの境にありながら、戦火に巻き込まれた事は一度もありませんでした。
そう言った事から、アリングは、フィオナとアルダス唯一の共同所有地、また非戦闘地域として協定が組まれていました。

アルダスとの和平会議は、アリングの湖の浮島にあるレストラン、「アクアヴィレッジ」で行われます。
現在の時間は午前11時45分、正午開始の会議まで、後15分です。
アクアヴィレッジに3人が着き、クリフォードは、入り口に居たウェイトレスに声をかけました。

クリフォード「ああ、予約していたヴォルトンだが、席はどこになるかね?」
ウェイトレス「ヴォルトン様ですね、お待ちしておりました、こちらになります」

ウェイトレスは、3人を、8人用の木製の円卓がある、南側のスペースへと案内しました。
そこには既に、女性が1人座り、ジュースを飲んでいました。
身長は170cm程の長身で、白い肌に細い体、小さい顔、ピンクのルージュをひき
白いワンピースが良く似合う、「貴族の令嬢」と言った雰囲気の女性でした。
ウィンセントは、その女性を見て、軽く動揺しました。

ウィンセント  「これは…ベルンハルデ殿」
ベルンハルデ「あら、ウィンセントさん!それに、アルヴィン様とクリフォード様ですね、お会い出来て光栄です」

ベルンハルデは、静かに立ち上がり会釈しました。

アルヴィン   「こちらこそ、かの名高いベルンハルデ殿が、こんな美人だとは思いませんでしたな」
クリフォード  「全くですな」
ベルンハルデ「ふふ、お上手ですね」
アルヴィン   「いやいや、して、ウィリアム殿はいずこに?」
ベルンハルデ「あ、今お手洗いに行っております、すぐに戻ってまいりますよ」
クリフォード  「そうですか、では会議に差し支えないよう、こちらも早めに注文しておきますかな?」
ウィンセント  「ええ、そうですね」

アルヴィン6世はカレーライスを、クリフォードはミックスサンド、ウィンセントはピラフを注文しました。

ベルンハルデ「ふふ、ウィンセントさんは本当にピラフがお好きですね」
ウィンセント  「うん?なぜそれを知っておられるかな?」
ベルンハルデ「以前イエイツでお会いしたでしょう?その時ピラフを食べている姿をお見かけしましたの」
ウィンセント  「なるほど、そうでしたか」
ベルンハルデ「あの時、一度お手合わせ出来て嬉しかったです、私と対等に戦える方は稀ですから、武人の冥利に尽きますわ」
アルヴィン   「ほう、このウィンセントと対等に戦ったと?」

ベルンハルデは、ニコニコして言いました。

ベルンハルデ「ええ、繰り出される一撃一撃の鋭さが、まるで他の方と違いました」
ウィンセント  「私は、あなたの瞬発力が恐ろしかったですね、まるで剣撃が当たる気がしませんでした」
クリフォード  「ほほ、お若い方はさすがですな、私のような年寄りは聞くだけで身震いするようだ」
ウィンセント  「(対等、か、相変わらず人を食ったような方だ)」

その時、アクアヴィレッジの奥にあるトイレから、初老の男性が出てきました。
アルヴィン6世は、その姿を見て反射的に立ち上がり、背筋を正しました。
身長は170cm程、痩せ型で、人当たりの良いやさしい顔立ちをしていましたが
発せられる高貴なオーラは、彼をただ者ではないと物語っていました。

アルヴィン「ウィリアム殿!」
ウィリアム「おお、これは、アルヴィン殿か、すまないね、ちょっと腹の調子が悪くてね」

ウィリアム5世は、お腹をなでながら、ベルンハルデの隣にゆっくりと歩いて来ました。

アルヴィン 「お会い出来て光栄です、アルヴィン=イーリアス=ニーグルです」
クリフォード「アルヴィン6世側近のクリフォード=ヴォルトンです、どうぞお見知りおきを」
ウィンセント「フィオナ王国騎士団第5隊隊長、ウィンセント=プレザンスです、よろしくお願いします」

ウィリアム5世は、お辞儀をして言いました。

ウィリアム   「ウィリアム=ディトワール=オドワイヤーです。
          こっちは、もう知っているかと思いますが、アルダス騎士団総団長のベルンハルデです」
ベルンハルデ「ベルンハルデ=バルテレスです、よろしくお願いします」

自己紹介を終えた5人は、円卓を囲んで座りました。
アルヴィン6世は、店の時計をチラと見て、言いました。

アルヴィン「ちょうど正午ですな、では会議を始めましょう」

アルヴィン6世は、まだ相手の出方が分からないため、あえて「和平会議」と言う言葉は使いませんでした。

アルヴィン「お分かりの通り、現在メリエル大陸の内部状況は、緊迫しております。
       フィオナとアルダスが争い、ザンティピーの活動も活発化している」
ウィリアム「うむ」
アルヴィン「私としては、この状況はとても好ましい状況とは思えないのです。
       このままお互いに戦力を消耗して、その隙をザンティピーに突かれたらどうしようもない。
       ベリンダが地形的にザンティピーへの多少の緩衝材にはなっているが、ベリンダ自体の動きも分かったものではない。
       ここは一度、お互いに矛を収めるべきではありませんか?」

数秒の間の後、ウィリアム5世が話し始めました。

ウィリアム「その理論は分かります、ただアルヴィン殿、人は理論だけでは動けないのですよ」

アルヴィン6世は、ギクリとしました。

ウィリアム「このメリエル大陸は、元々ザンティピーとベリンダの物だったのはお分かりですな?」
アルヴィン「ええ、それは承知しています」
ウィリアム「そのメリエル大陸に乗り込んだのは、今はご存知の通り二分化されているが、フィオナとアルダスの連合軍であり
       私の祖先のウィリアム1世、ウィリアム=ベーレント=オドワイヤーが主体となり統合活動をし、正に血を吐く思いで結成された軍なのです。
       元々、フィオナとアルダスは、数百年に渡り敵対していた、その溝は考えるまでもなく深かったはずです。
       ただ、どちらも単独でメリエル大陸に乗り込むのは不可能と判断し、最終的にウィリアム1世に兵権を委ね、メリエル大陸に攻め入る事になった。
       その時の公約は、「メリエル大陸は、フィオナとアルダスで共同で開拓し、国益を共有する」と言うものだったのです。
       事実上、フィオナとアルダスが一体となった国を、メリエル大陸に建国するはずだったのです。
       しかし、フィオナのアルヴィン1世は、公約を守らなかった。
       軍部の大部分の人心を掌握し、ウィリアム1世から兵権を奪い取る形で連合軍から離反して、メリエル大陸に単独でフィオナを建国したのです」
アルヴィン「そんなはずはない!フィオナの歴史では、最初からアルヴィン1世が兵権を持っていたとなっている!
       メリエル大陸の2/3まで侵略を成功させた時、アルダスが突然連合軍から離反し、戦争状態に突入したと歴史書には…」

ウィリアム5世は、少しため息をつきながら言いました。

ウィリアム「申し訳ないが、それは間違いですよアルヴィン殿。
       フィオナは、人体改造の技術提供はしたが、軍事力自体、当時はアルダスの方が優勢だったのですから。
       軍事力で下回っているフィオナに、兵権を委ねるとお思いですか?」
アルヴィン「いえ、それは…それより、人体改造?何を言っているのです?」
ウィリアム「何!?あなたは、当時の人体改造を知らないのですか!?」

アルヴィン6世は、ウィリアム5世が何を言っているのか分からず、頭が混乱してきました。

ウィリアム「これでは話になりませんな…アルヴィン殿、あなたはもっと歴史を知るべきだ。
       ふぅ、話を戻しますが、とにかく、予定通りメリエル大陸の併合が進み、フィオナが公約を守ってさえいれば
       今こうしてフィオナとアルダスが争っている状況は、なかったのです。
       一方的に約束を破り、アルダスとオドワイヤー家の誇りを踏みにじったフィオナから
       勝手に手を差し伸べられても、それを取る事は絶対に出来ませんな」

アルヴィン6世は、絶望しました。

アルヴィン「ぬ、ぐ…ウィリアム殿、それでは今日、なぜここへ?
       先ほどは言わなかったが、この会議は「和平会議」と銘打っていたはずです。
       元々断るつもりなら、ここに来る必要もなければ、こうして剣先を突きつけあう事もなかった!なぜです!」

ウィリアム5世は、がっかりしながら言いました。

ウィリアム「私は本当に、和平するつもりで来たんですよ」
アルヴィン「なんですと?」
ウィリアム「アルヴィン殿、いえ、フィオナが過ちを認め、全面的に謝罪するつもりでここに来て
       そして、昔の公約を思い出してくれたのかと期待していたのです。
       それだったら、過去は過去の事と割り切り、喜んで和平の道を取ったでしょう。
       ところが、あなたは、過ちも知らず、謝罪もせず、公約の事をおくびにも出さず、さらに歴史の暗である人体改造の事実も知らなかった。
       それで「和平」を考えるなど、私には出来ません」

アルヴィン6世も、がっかりしながら言いました。

アルヴィン「なるほど、あなたが和平を取ると言う事は、フィオナがアルダスに屈服するのが条件、と言うわけですな」
ウィリアム「威圧的な言い方ですな、私は単純に謝罪を求めているのです」
アルヴィン「私は、フィオナとニーグル家、そして愛する国民の誇りを預かっているのです。
       ここで、私の一存だけで謝罪する事など出来ませんよ!」

ウィリアム5世は、アルヴィン6世から視線を切り、言いました。

ウィリアム「分かりました、アルヴィン殿、あなたはまだお若い。
       本当の歴史を知る人物が、あなたの騎士団には居るはずだ、その方から学びなさい。
       そして過ちに気付いたら、そうですね、またここで会いましょう」

アルヴィン6世は、勢い良く立ち上がり、踵を返して言いました。

アルヴィン 「帰るぞ!クリフォード!ウィンセント!」
クリフォード「は、はっ!」

ウィンセントは、立ち上がると同時に、ベルンハルデを一瞬見ました。
ベルンハルデもその視線に気付き、ニッコリと笑いながら言いました。

ベルンハルデ「また、戦場でお会いしましょう」
ウィンセント 「…ええ」

帰りの馬車の中、アルヴィン6世は憤りと混乱に頭を支配されていました。

アルヴィン「くそっ、なぜだ!これ以上争うなど意味がない、なのにどうしてだ!
       …アルヴィン1世とは一体なんなのだ?人体改造?分からぬ!分からない事だらけだ!」

クリフォードは、オロオロしながら言いました。

クリフォード「アルヴィン様、どうかお気をお静めください、我が国が間違っている事などありません!
       もし歴史に真実があるとしても、我が国が一方的に間違うなどと言う事はあり得ません!」
アルヴィン 「うむ、すまない…私は少し眠る、フィオナ城に着いたら起こしてくれ」
クリフォード「はっ、分かりました…ウィンセント、どうした?」

ウィンセントは、外を見ていましたが、ハッと気付きました。

ウィンセント「いえ、気になるんですよ、ウィリアム5世は、「騎士団に歴史を知る者が居る」と言いました。
       別に「王室」でも「歴史学者」でも良かったはず…いえ、その方が自然です。
       なのに、なぜ、あえて「騎士団」なのでしょうか?」



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