フィオナ王国城下町東、アッシュ高原エルシー区、通称アッシュ街に住むヴィヴィアは
フィオナ王立高等学校「へーリアデス」へ通っていました。

同校は、月曜日から金曜日は、朝8時から午後3時まで平常授業、その後にクラブ活動があり
土曜日は、正午12時で平常授業は終了、昼食をまたいでクラブ活動に入ります。
日曜日は休みとなっています。

ヴィヴィアは、クラブ活動に「ダンス」を選んでおり、元々の身体能力の高さと容姿の美しさもあり、ダンス部のダブルエースとして活躍していました。
ダブルエースですから、当然もう一人エースが居る事になりますが、そのもう一人は
ダンス部の部長を務めていて、ミス・フィオナでヴィヴィアと共に1位2位を取った、ベアトリクス=ライアンでした。

ヴィヴィアは、毎週土曜日になると、クラブ活動をサボってどこかに行ってしまうので
部長であるベアトリクスは、親友としては良くとも、他のクラブ員の手前良くないと思い
ヴィヴィアにそれとなしに事情を聞こうとしていたのですが、あいまいな返事ばかりが返ってきて、真相が分からないため
土曜日のこの日、ベアトリクスは、クラブ活動を副部長のフェイス=ロセッティに一任し、ヴィヴィアを尾行する事にしました。
フェイスは、ダンサーとしてはほとんど活動しておらず、主に部員の体調管理や練習メニューを組んだりなど
マネージメントを担当しており、ベアトリクスもそれに従って練習をしていたため、実際の所、ダンス部を動かしていたのは、フェイスでした。

フェイス「はあ、良いですけど、でも部長が居なくて皆まとまってくれるかなぁ?」

ベアトリクスは、フェイスの肩をポンポンと叩いて言いました。

ベアトリクス「だいじょーぶでしてよ、私も貴女を頼りにしてるんだし、次期部長としての経験を積んでちょうだい」

フェイスは、右頬をコシコシとこすりました。

フェイス   「次期部長ですか、えへへ、照れますね」
ベアトリクス「んふふ。あ、そうそう」
フェイス   「はい?」
ベアトリクス「私が早退する理由は、『お昼のお弁当に当たった、タマゴにやられた』とか適当に言っておいてちょうだい」

それを聞いて、フェイスは焦りました。

フェイス   「も、もうちょっと格好良い理由を考えますよ!」
ベアトリクス「んーま、お任せするわ」

そう言うと、ベアトリクスは長い金髪を後ろで結び、度が入っていない伊達メガネを掛け、簡易的な変装をしました。

ベアトリクス「それじゃあ、行ってくるわ、ヴィヴィアのしっぽをつかんでやるのよ。ほーっほっほ!」
フェイス   「部長、高笑いは控えた方が」

ベアトリクスはハッとし、頬を赤らめて、キョロキョロと左右を確認した後、だまってフェイスからそそくさと離れていきました。
誰にも見つからないように辺りを警戒しながら進み、4階建ての校舎の屋上に昇り
かねてから用意していた双眼鏡を鞄から取り出し、目にあてがい、ヴィヴィアを探しました。

ベアトリクス「(あら?この双眼鏡不良品かしら、小さく見えるわ…あ、これ逆だわ!誰も居ないのにコントをしてる場合じゃないのよ!)」

向きを転回させ、改めて双眼鏡を目に当て、校庭や学校の門などあちこちを見ましたが、ヴィヴィアは見つかりません。

ベアトリクス「(変ねえ、あの子目立つからすぐ分かると思ったのに)」

ベアトリクスは、とりあえずヴィヴィアの靴が下駄箱にあるかないかを確認する事にし
屋上に昇った時と同じように、周りを警戒しながら進みました。

もっとも、長身で美貌に優れたベアトリクスですから、遠くから見ても、明らかに「ベアトリクス」と分かるため
結局のところ、上手く隠れられていると思っているのは、本人だけでした。
そして彼女は、1階の下駄箱エリアに到着しました。

ベアトリクス「(えーと、あの子のは確か24-Bだったかしら)」

24-Bの下駄箱をのフタを開けると、そこには外履きの靴がありました。

ベアトリクス「(ああ、まだ校舎内に居るのね!見つからないはずだわ)」

その時、ベアトリクスの後ろから女性の声が聞こえました。

女性「あの…」

女性がベアトリクスの背中をトントンと叩いたため、ベアトリクスは振り向きながら文句を言いました。

ベアトリクス「何ですの!今私は重大なわあああああ!」
女性    「きゃああああ!」

そこにはヴィヴィアがおり、ベアトリクスは驚いた勢いでドテッとしりもちをついてしまいました。

ヴィヴィア「ベアトリクスさん!何してるの!?」

ベアトリクスは、とっさに後ろを向き、他人の振りをしました。

ベアトリクス「知りませーん、ベアトリクスじゃありませーん」

ヴィヴィアは、後ろからそっと近づき、ヘアゴムでまとめていたベアトリクスの髪をほどき、伊達メガネを外しました。

ベアトリクス「ああ!ひどいわ!」
ヴィヴィア 「んもう、こんな変装でだませるはずないでしょ」

追い詰められたベアトリクスは、開き直りました。

ベアトリクス「もういいわ!ヴィヴィア!今日こそ貴女のしっぽをつかんで見せるわ!
        私も連れて行きなさい!どこか知らないけど!…何私のメガネ掛けてるのよ!」
ヴィヴィア 「え、ちょっと良いかなって…うーん、もう仕方ないか…良いよ」
ベアトリクス「しっぽをつかませるのね!良い心がけでしてよ!」

ベアトリクスは立ち上がり、スカートのホコリを払いました。

そして自分の下駄箱から靴を出し、ヴィヴィアをチラッと見ると、ヴィヴィアは24-Aの下駄箱のフタを開けていました。

ベアトリクス「あら、貴女24-Bでしょ?」
ヴィヴィア 「え、私24-Aだよ?」
ベアトリクス「それじゃ、これは誰の?」

ヴィヴィアは、少し考えて言いました。

ヴィヴィア 「ああ、多分ゼノヴィアさんね、漫研の」
ベアトリクス「もう、紛らわしいのよ!この前もシルヴィアさんと友達になったし、何とかヴィアって流行っていて?」
ヴィヴィア 「さぁ…」

そうしてヴィヴィアとベアトリクスは、一緒に校門を出ました。

ヴィヴィア「ところで、ばれなかったらどうしてたの?」

ベアトリクスは、自信たっぷりに言いました。

ベアトリクス「もちろん、今日一日張り付くつもりでしてよ?色々用意したんですからね」
ヴィヴィア 「へえ?」

ベアトリクスは、鞄から各種アイテムを取り出しました。

ベアトリクス「まずカツラでしょ、双眼鏡でしょ、伊達メガネ」
ヴィヴィア 「うん」
ベアトリクス「そして付けヒゲ、迷彩服でしょ、後こんなのもあるのよ、キョウトシカクイのエアハンドガン、万全でしてよ」

ヴィヴィアは、何に対して万全なのか良く分からなくなりましたが
自分の事を調べたがっていたと言うのは、大変良く分かりました。
2人は、アッシュ街の街並みを右に右に進み、ある公園へとたどり着きました。

ベアトリクス「あら、ここは『ハンナ』じゃないの」
ヴィヴィア 「うん、彼はもう先に居るはずなの」

ベアトリクスは、ぎょっとしました。

ベアトリクス「ちょっと、『彼』ですって!?貴女、彼氏が居て!?抜け駆けよ!」
ヴィヴィア 「ちょ、ちょっと何勘違いしてるのよ!そういうのじゃないの!」

2人は、ワイワイと言い合いながら、その『彼』が居ると言う、ハンナの西側にある第3広場へと向かいました。
広場には、1人、筋肉質ながらスラッとした長身の男性が居ました。
男性は2人に気付くと、右手を振り、挨拶をしました。

ベアトリクス「あの方が貴女の彼氏でして?」
ヴィヴィア 「だからもー、彼氏とかじゃないの!」

2人が男性に近づくと、男性は挨拶をしました。

男性   「ヴィヴィアさん、おはようございます、こちらの方は?」
ヴィヴィア「ええと、私の親友のベアトリクスと言います、ちょっと分けがあって…」

ベアトリクスは、男性の事を値踏みするようにジロジロと観察しました。

ベアトリクス「貴方、ヴィヴィアの何でして?いえ、まず名乗りなさい」
男性    「これは失礼しました、私はウィンセント=プレザンスと申します。以後お見知りおきを」

ウィンセントが、ベアトリクスに対して謙虚に接したため、ベアトリクスも少しウィンセントの事を見直しました。

ベアトリクス「こちらこそ、私はベアトリクス=ライアンですわ。
        改めて聞くけど、貴方は、ヴィヴィアの何でして?
        見た所20代後半に思えますけど、結構親しい間柄に見えますわね」
ウィンセント「ええ、私は…あっ?」

その時、ヴィヴィアがベアトリクスの手を取り、側にあった木の陰へと引っ張り込みました。

ベアトリクス「ちょ、ちょっと何でして?まだ会話中でしてよ!」
ヴィヴィア 「ベアトリクスさん!ウィンセントさんは、フィオナ騎士団の第5隊隊長なの!あんまり失礼な事言わないで!」

騎士団の隊長と聞き驚いたベアトリクスですが、すぐに平静になりました。

ベアトリクス「それならなおさらだわ!もっと聞き出さなくちゃ!」

ベアトリクスは、木の陰からバッと勢い良く出ると、エアハンドガンを手にウィンセントを問いただしました。

ベアトリクス「貴方、騎士団の隊長なんですってね、一体どういう目的でヴィヴィアに近づいて?
        場合によってはこの銃が火を噴くわ!出るのはプラスチックの弾ですけれどね!当たるとそれなりに痛いですわよ!さぁ答えなさい!」

歴戦の騎士のウィンセントも、この対応には動揺しました。

ウィンセント「いえ、あの、私はですね…」

それを見たヴィヴィアは、ハンドガンの銃口を右手の手のひらでふさぎ、ベアトリクスに言いました。

ヴィヴィア 「ベアトリクスさん!ウィンセントさんは、私に剣を教えてくれてるだけなの!」
ベアトリクス「な、何ですって?剣?」
ヴィヴィア 「そう、剣!私のお父さん知ってるでしょ?それで、隊長のウィンセントさんに会わせてくれたから
        私が無理を言って師匠になってもらっただけなの!」

それを聞いたベアトリクスは、おもちゃの銃を構えている自分が恥ずかしくなりました。

ベアトリクス「じゃあ、貴女が土曜日に部活をサボるのって、剣を教えてもらっていたって事でして?」
ヴィヴィア 「うん、そういう事、ウィンセントさんは土曜日が空いてるの」

ベアトリクスは、ウィンセントの顔を見ました。

ベアトリクス「そうでして?」
ウィンセント「ええ、そうです、とりあえず銃を下ろして頂けますか?」

ベアトリクスは、軽くため息をつき、ガンマンのように、銃をトリガーガードを中心に人差し指でクルクルと回し
格好良く下に下ろそうとしましたが、一度もやった事がない動きに指が付いていかず、すっぽ抜けて地面にドサッと落ちました。
慌てて銃を拾い、土ぼこりを払って鞄に入れ、ヴィヴィアとウィンセントに「見た?」と目配せをしたため
ヴィヴィアとウィンセントは、「見ていない」と顔を左右に振りました。

ベアトリクス「事情は分かりましてよ、でもヴィヴィア、ダンス部を無断で休むのはいただけなくてよ?
        それに、貴女、体は大丈夫なの?ダンスだけでもハードなのに、剣の稽古でしょう?無理は良くなくてよ?」

ヴィヴィアは、人差し指で右頬をいじりながら言いました。

ヴィヴィア 「うん、ごめんなさい。でも、ベアトリクスさんに言ったら、今みたいに私の体の心配すると思って言えなかったの」
ウィンセント「私も、教えている身ですが、その点が心配でもあるんですよ。
        ヴィヴィアさんは音を上げない方ですので、実際どこまで訓練をつけて良いものか分からなくもあるのです」
ヴィヴィア 「ウィンセントさん、私は本当に大丈夫ですよ」

ベアトリクスは、うなりながら考え、一つの答えを見出しました。

ベアトリクス「ウィンセントさん、その訓練って、私たち2人でも受けられるものかしら?」
ウィンセント「え?ええ、まあ、私も普段隊員に訓練を施している身ですから、何人でも大丈夫ですが」

ベアトリクスは、「よし」と声を上げました。

ベアトリクス「良いわ、ヴィヴィア、今この時を持って、あなたをダンス部から除名します」
ヴィヴィア 「えっ、どういう事?」

ベアトリクスは、ヴィヴィアを制しました。

ベアトリクス「良いから聞きなさい。それで、ウィンセントさん、私達2人だけでも出来る訓練メニューを教えてちょうだい。
        土曜日以外は、私とヴィヴィア、学校が終わってから、2人でその訓練メニューをこなすのよ」

ウィンセントとヴィヴィアは驚きました。

ヴィヴィア 「ええ!?ベアトリクスさん、ダンス部はどうするの!?」
ベアトリクス「もちろん、私も退部よ。後任の部長は、フェイスに継いでもらうわ」
ヴィヴィア 「う、うーん、でも、皆ベアトリクスさんを精神的に頼ってる所があると思うんだけど、大丈夫なのかなぁ」

ベアトリクスは、少し寂しい表情をしながらも、心は既に決意していました。

ベアトリクス「大丈夫でしてよ、フェイスなら皆を無事に牽引してくれるわ。
        ま、しばらくは相談にも乗るつもりだけど、いつまでも私が居ては、あの子のためにならなくてよ」
ヴィヴィア 「そっかぁ…」

ここで、ウィンセントが話に入りました。

ウィンセント「一つ確認しておきたいのですが、もしかしてベアトリクスさんも騎士を目指している、という事でしょうか?
        いえ、もしそうでないのなら、ただ無駄に体を鍛えるだけになってしまいますし」
ベアトリクス「ああ、ええ、その点なら問題なくてよ、私も騎士になるつもりですの。
        ヴィヴィアと2人で、騎士団のツートップになると約束しているの」

ウィンセントは、微笑みました。

ウィンセント「なるほど、それなら教え甲斐があると言うものです」
ベアトリクス「宜しくてよ。で、ウィンセントさん、今日はどんな訓練をするつもりだったのかしら?」
ウィンセント「そうですね、今日は木剣での摸擬戦と言う所でしたが、まずお2人で出来るメニューを考えましょうか?」

それを聞いて、ベアトリクスは唇に人差し指を当て、ちょっと考えて言いました。

ベアトリクス「その摸擬戦、私と一度してくれないかしら?」
ヴィヴィア 「えっでも、ベアトリクスさん、剣の経験とかあった?」

ベアトリクスは、うなずきました。

ウィンセント「そうですか…そうですね、メニューを決めるためにも、まず軽く動いてみましょうか」
ベアトリクス「ええ、レイピア式の木剣はありまして?」
ウィンセント「一応ありますが、レイピアの経験がおありで?」
ベアトリクス「たしなむ程度にはありますわ」

ヴィヴィアは、ベアトリクスに剣の経験があるとは知らなかったため、とても興味が出てきました。
ウィンセントは、持ってきた数本の木剣の中から、レイピアタイプの木剣を取り出しました。

ウィンセント「どうぞ」

木剣を受け取ると、ベアトリクスは、3回木剣で空を切ってから、構えました。
対するウィンセントは、ロングソード形式の木剣を取り出し、同様に構えました。

ウィンセント「ヴィヴィアさん、開始の合図をしてくれますか?」
ヴィヴィア 「はい」

答えてから7秒後、ヴィヴィアは「はじめ!」と声を出しました。

その声と同時に、ベアトリクスは自分の体と共に木剣を高速に前に突き出し、ウィンセントの胸部を捕らえようとしました。
瞬間、ウィンセントは右足を支点に体を回転させ、突きを回避し、その勢いそのままにレイピアの刃の部分に木剣を振り下ろし、武器破壊を狙いました。
ベアトリクスは、親指を、手指を保護するカバーに引っ掛け、剣撃をかわすようにレイピアを回転、レイピアを逆手持ちに切り替え
ウィンセントが居るであろう自分の後方に、剣先を突き出しました。
しかし、その突きは空を切り、驚き振り返るベアトリクスですが、ウィンセントは振り返るベアトリクスの後方に既に回り込んでおり
木剣でベアトリクスの背中に軽く触れ、そこで摸擬戦は終了しました。
ヴィヴィアの開始の合図から、この間、2秒にも満たない高速の戦闘でした。

糸が切れたように地面に突っ伏したベアトリクスの元へ、ヴィヴィアが駆け寄りました。

ヴィヴィア「大丈夫!?」

ベアトリクスは、息を切らしながら答えました。

ベアトリクス「大丈夫…でしてよ、どこにも当たってないわ、ただ疲れただけでしてよ。でも貴方、さすが隊長ですわね」

ウィンセントは、微笑み言いました。

ウィンセント「いえ、驚きました。正直に言いまして、私の隊の上級レベルの隊員でも、ベアトリクスさんに負けてしまうかもしれません」
ヴィヴィア 「そんなに強いんですか?」
ウィンセント「ええ、本当に大したものです」

ウィンセントのこめかみに、薄く汗が浮いているのをヴィヴィアは見つけ、その言葉が嘘ではない事が分かりました。
しかし、不可解なのは、ベアトリクスのその「強さ」でした。
一体どこでそのような剣の力を身に着けたのか、ヴィヴィアは疑問に思いました。
ベアトリクスは、ヴィヴィアが自分の事を不思議がっている事に気付き、立ち上がり、膝についた砂ぼこりを払いながら話はじめました。

ベアトリクス「不思議なのは無理ないけど、ただ単純に、昔おじい様から剣の手ほどきを受けただけでしてよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」
ウィンセント「おじい様ですか…苗字がライアンでしたね?もしや、グランヴィル=ライアン卿ですか?」
ベアトリクス「あら、ご存知?」
ウィンセント「それはもう!」

ウィンセントは、両手を広げて驚きを表現しました。

ヴィヴィア 「どういう方なんですか?」
ウィンセント「ええ、10年程前まで、イーリアス公の専属ガードをしていた方ですよ。
        セブンス・ナイトの中でも、「インペリアルガード」の称号を持つ、最高の騎士の1人です」
ベアトリクス「ん、ま、今は隠居してて、1日中ブチネコのニケと一緒に読書してるだけですけどね、でも尊敬してますわ」
ヴィヴィア 「へええ〜」

ウィンセントは、うなずきました。

ウィンセント「いやしかし、こんな美しいお孫さんが居たとは、2重に驚きです」

「美しい」と言うワードに反応し、ベアトリクスは目を輝かせました。
それを見たヴィヴィアは、「あちゃー」と思いました。
ベアトリクスは、ウィンセントに、さっきの摸擬戦の第1撃の突きよりも数段早い、電光のようなスピードでウィンセントに駆け寄り、手を取ってブンブンと振りました。

ベアトリクス「うん!そうよ!貴方分かってるじゃない!強さだけじゃ意味なくてよ!美しくなくちゃね!
        さっきの貴方の動きも美しかったわ!いえ、貴方自身とても美しいわ!」
ウィンセント「あ、ええ?はい?」

ウィンセントは、ヴィヴィアを見ました。

ヴィヴィア 「こういう子なんです…」
ウィンセント「そうですか…」

2人は、「騎士」と言う共通の目標へ向かって、共に歩み始めました。
所属していたダンス部は、ベアトリクスから後事を託されたフェイスが、立派に切り盛りし
フェイス自身も、2人に負けていられないと思い、ダンサーとして身を立てていく決心をしました。
その後、フェイスと部員達は、ダンスグループ「ベアトルヴィア」を結成し、フィオナ中で活躍して行く事になります。

ベアトリクスとヴィヴィアも、頼もしい後輩達に後押しされ、憂う事なく鍛錬を積みました。
2人が将来「セブンス・ナイト」になるのは、この時既に約束された事だったのかもしれません。



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