その日シルヴィアは、丸まっていました。


騎士になる事を目指し、シルヴィアとラルが、フィオナ城下町の剣術道場「ルーサーフォード」に入門してから、早6ヶ月の月日が経っていました。
剣の振り方も中々さまになって来ましたし、体力もそこそこ付いたかなと、シルヴィアは実感していました。
そんな彼女にも、ひとつ悩みがあり、それは、「道場の誰にも勝ったことがない」と言うものでした。

シルヴィアとラルは、ルーサフォードでは一番新しい門弟ですし、それまで鍛えてきた他の門弟達に勝てないのも、まあ仕方ない…
とは思うものの、頭の片隅では、「そろそろ誰かに勝ってみたい」と言う気持ちを持っていました。
では、同期のラルと対戦しては?と言う事に関しては、「ラルに負けたら自分がこの道場で一番弱い」と言う事実を突きつけられてしまうため
姉としてのささやかなプライドが許せず、今まで本気で戦った事はないのです。

ある日曜日、師範のエレアノールが門弟全員に稽古をつける事になっている、午後4時を回りましたが、エレアノールは中々道場に姿を現しませんでした。
シルヴィアとラルは、「どうしたのかな」と疑問に思いながら、剣の素振りを続けていましたが
他の門弟達が、「そうか、いよいよ」とか「今回は誰になるんだろうな」などと話している事に気付いたため
シルヴィアは、近くに居たスチュアートに、疑問をぶつけてみる事にしました。

シルヴィア「あの、皆なにか、その、誰になるのかとか話してますけど、何かあるんですか?」

スチュアートは、「ああそうか」とハッと気付いた表情をし、木剣を支えに立ちながら、言いました。

スチュアート「そう言えば、シルヴィアさんもラルさんも、まだ経験してなかったよね、交流試合」
ラル     「交流試合?」
スチュアート「そう、交流試合。皆剣を振ってるんだから、自分達がどれ位強いのかとか、知りたいし
        他の道場の剣術ってどんなんだろー?とか思うわけじゃない」
シルヴィア 「たしかに、そうですね」
スチュアート「だから、師範が定期的に他の道場と連絡を取って、他の道場の門弟と交流試合ってカタチで戦おうってわけ」
ラル     「へえー、そんなんあるんだ」
スチュアート「今までは、大体2〜3ヶ月に1回あったんだけど、今回はちょっと間が空いてたからね、皆期待してるんじゃないかな」

シルヴィアは、なるほどと思いました。

シルヴィア 「あの、それで、誰が戦うとか、どうやって決めてるんですか?」
スチュアート「んーまあ、師範がアミダで7人決めて、その後、その人達を、先鋒、次鋒、五将、中堅、三将、副将、大将に振り分けるって感じかな」
ラル     「アミダで7人かぁ」
スチュアート「ああでも、まだ試合に出た事ない人とか、回数が少ない人が優先的に選ばれたりもするから
        もしかしてシルヴィアさんとラルさんも回ってきたりしてね」
ラル     「ぴえ」
シルヴィア 「いやいやいやいや」

シルヴィアは、右手を左右にびゅんびゅんと振りました。
しかし、「もしかしたら誰かに勝てる機会があるかも」と、内心は、少しだけ期待していました。

シルヴィア 「あ、そういえば、スチュアートさんは出た事あ…って、ありますよね」
スチュアート「あるある、今まで15回位あって、特に「バドルストーン」って道場は強かったなあ、俺中堅で出たん…」

その時、師範のエレアノールが、しゃなりしゃなりと道場へ入ってきました。
左手には、試合のオーダーらしき紙を筒状にして持っていたため、皆エレアノールに視線をそそぎました。

エレアノール「おはようございます」
門弟全員  「おはようございます!」
エレアノール「ではさようなら」

門弟達は、どどっと崩れ落ちました。

女性の門弟 「師範、そういうのいいです…」
エレアノール「最近、「肩透かし」に凝ってるだけなの、皆の気持ちは分かってるわ。
         えー、じゃ、皆気付いてると思うけど、交流試合の日程が決まりました」
門弟「おお!」

門弟全員が、期待と緊張に包まれました。

エレアノール「相手は、「バドルストーン」、おととし戦ったとこね」
スチュアート「お!」
エレアノール「で、試合の日は二週間後の日曜日、これから戦う人を発表するけど、もし都合が合わない時は、別の人に替えるから言ってね」

エレアノールは、丸めていた紙を、鋲でボードに貼り付けました。

エレアノール「先鋒、エイミー」
エイミー   「やった!」
エレアノール「次鋒、ジェンソン」
ジェンソン  「よし!」
エレアノール「五将、ロデリック」
ロデリック  「おっ、俺か」
エレアノール「中堅、スチュアート」
スチュアート「お、やった!また出れる!」
エレアノール「三将、シーヴァー」
シーヴァー 「お、やったね」

シルヴィアとラルは、ここまで呼ばれず、しかも空いているのは副将と大将しかないため
今回は呼ばれないと確信し、半分安心、半分寂しくもありました、しかし…。

エレアノール「副将、ラル、大将、シルヴィア、はい以上、これが今回のオーダーね」

シルヴィアとラルは、お互いの顔を見つめました。
そして同時に、「自分達以外にシルヴィアとラルと言う名前の人が居るのだろう」と思いました。
しかし気が付くと、近くに居た門弟達に、「やったな!」とか、「頑張れよ!」などと言われていたため
シルヴィアとラルは、「自分達が選ばれた」と分かり、焦り始めました。

ラル     「ちょっちょっちょっ」
シルヴィア 「し、師範!」
エレアノール「あら、なに?」
シルヴィア 「私たち、まだ半年しか経ってないのに、選ばれて、しかもいきなり副将と大将って…」
エレアノール「いいじゃない、ここではまだ戦った事ない人優先なの
        あと、ポジションだけど、バドルストーンの方も、副将と大将は新しく入った女の子なのね。
        なら、こっちも新しく入った女の子を出すしかないじゃない、そうじゃないと面白くないし」
ラル     「そうなの…」
エレアノール「もちろん、勝算がない訳じゃないわよ?ラルさんはスジが良いし
        シルヴィアさんは二刀レイピアなんて珍しい型に順応出来てるし、結構良いところ行くと思うわ。
        もっと自信、持った方がいいわよ?」

そう言われて、シルヴィアとラルは、少し勇気が出てきました。

シルヴィア 「…頑張ります!」
ラル     「勝てるといいな〜」
エレアノール「ふふ…えーと、で、今回はバドルストーンで試合をする事になったから
        さっきも言ったけど、試合は二週間後の日曜日で、当日は、午後1時にバドルストーンのあるアッシュ街の入り口に集合ね。
        試合に出る人は当然だけど、応援したい人も1時集合、忘れないでね」
門弟全員  「はい!」


そして二週間後の日曜日、試合に出る7人はもちろんの事、道場の門弟全員が、一人の欠席も出さずにアッシュ街の入り口に集合していました。
ルーサーフォードは、フィオナ王国でもかなりの強豪として知られていますが、その強さは、この「結束」にあるのかもしれません。

ラル     「久しぶりだなぁ、アッシュ街」
スチュアート「ん、来た事あるの?」
ラル     「うん、実はね…」

ラルは、中学生の頃、ブライアン=コールフィールドに会い、ラヴィニア族特有の「愛する者の精気を奪い取ってしまう」
自分の力からシルヴィアを守るため、お守りのペンダントを受け取った事
そして、帰り道に盗賊に襲われ、アッシュ街でヴィヴィア=エアハートに助けられた事を話しました。

スチュアート「へー、あ、シルヴィアさんがいつもしてる水色のやつ、これがそうなんだ、おしゃれで付けてるかと思ってたよ」
シルヴィア 「ええ、でも、デザインもおしゃれですよねこれ、20歳を過ぎても普通に着けてようかと思ってるんですよ」
スチュアート「うん、そりゃいいね」
ラル     「私もそういうの欲しいなぁ…そう言えば、ヴィヴィアさんもミス・フィオナに出てたけど、凄くきれいだったね」
シルヴィア 「そうそう、今でも同じ舞台に立ったって信じられない、ですよね」
スチュアート「俺を見るのね」

3人が話していると、三将に選ばれたシーヴァーが話しかけてきました。

シーヴァー 「ねえ、バドルストーンの人達が迎えに来てくれたみたいだよ」
スチュアート「おっマジ?相変わらず丁寧な道場だよね」
ロデリック  「ナメプって奴じゃないの、俺もゲーセンで良くやられる、ははは」
スチュアート「おいおい…」

そう言っている間に、バドルストーンの代表、ルイス=バドルストーンが、門弟達の前に出て、会釈をしました。
ルイスは、年齢は70歳を越えていますが、剣客として鍛えているせいか、実年齢よりかなり若く見えます。

ルイス    「いや皆様、遠路はるばるアッシュ街までありがとうございます。
         名高いルーサーフォードとの二度目のお手合わせ、門弟共々、大変楽しみにしておりました」
エレアノール「ありがとうございます、先生もますますご健在で、とても嬉しく思います」
ルイス    「エレアノール様も、ふふ、では、長い挨拶も無粋でしょうから、さっそく道場の方へご案内させて頂きます」
エレアノール「よーし、やろうどもいくぞ!!」

その場に居た全員が、吹き出しました。

ルイス  「はは、相変わらずですな、では行きましょう」
エイミー 「ああー…しびれる」
ジェンソン「しびれてるし」

ルイスとバドルストーンの門弟達が先導していく中、シルヴィアは、ある事に気付きました。
相手の門弟達の中に、見覚えのある後ろ姿が、2つあったのです。

シルヴィア 「…いやないない、似てる人だよねきっと」

シルヴィアは、ブツブツ言っていました。
道中、エレアノールとルイスは、二週間前の仮に決まっていたものではない、お互いの正式な対戦相手のリストを交換し、試合に出る7人に配布しました。

ラル    「ねえ…ねえ!」
シルヴィア「…ん?え?」

シルヴィアは、考え事をしていたため上の空でしたが、手元にある紙を改めて見て声を上げました。

シルヴィア「あーっ!」

そして、相手方の中でも、声が上がりました。

女性の声2人「ああっ!?」

その女性2人がシルヴィアとラルの方を振り向き、そして4人(とスチュアート)は、確信するに至ったのです。

シルヴィア 「あー!」
ラル     「ぴゃ!」
ヴィヴィア 「シルヴィアさんと、ラルちゃん!?」
ベアトリクス「対戦相手の女の子って、貴女でして!?」
スチュアート「(うぎゃー)」

5人の時はしばらく止まり、その回りで「なんだなんだ」と門弟達がざわついていました。

ルイス    「うん?」
エレアノール「あら、お知り合い?」

その声に、5人はハッとしました。

シルヴィア 「あっ、えと、ええ、まあ…その、ちょっと」
エレアノール「ふーん、ちょっと知り合いなのね」
ラル     「ちょっとって言うか、結構?」
エレアノール「ふーん、まあ程度はどうでも良いけど、本気で戦わないと意味がないから、手を抜くのはダメよ?」
シルヴィア 「は、はぁ…」

そして、シルヴィア、ラル、ヴィヴィア、ベアトリクスの4人は、会話をしながら進み、スチュアートは他人の振りをしました。
スチュアートにしてみれば、ヴィヴィアとベアトリクスとのつながりは、「女の子だったスーチ」であるため
もし自分だとバレたら、どうなるか分かったものではなかったのです。

ベアトリクス「貴女がラルちゃんね、チャリティー・ガールズの時、シルヴィアさんから良く聞いてましてよ」
ラル     「そうなの?」
ベアトリクス「ええ、とても可愛くて、良い親友で、良い妹って」
ラル     「そうなんだ、えへへ…ベアトリクスさんの事ポスターとかで見てたけど、やっぱり本物の方がずっと綺麗だね」
ベアトリクス「そう!分かりまして!?ふふ、貴女も可愛くて綺麗でしてよ!ほーほっほ!」

ヴィヴィアは、「ああ…」と小声を出したのち、シルヴィアの方に向きなおって話しました。

ヴィヴィア「シルヴィアさん、剣術道場入ったんだね、体を鍛えたいとか?」
シルヴィア「あ、実は私、騎士になろうって決めたんです、ラルも…それで半年前から、ルーサーフォードに通い始めたんです」
ヴィヴィア「ええ、騎士!?」

ヴィヴィアは、目を丸くしました。

ヴィヴィア「へええー、シルヴィアさんって、可憐なイメージだったから、ちょっと意外」
シルヴィア「いゃはは、そんな事ないですよ!半年前まで、目標もなくてのらくらーってしてたダメな感じですし…。
       でも、ある騎士の人と出会って、なんだか自分の中に強い気持ちが出てきちゃったんです」
ヴィヴィア「ある騎士?」
シルヴィア「はい、女性の騎士なんですけど、ラルと私と、あと家族の事も助けてくれて、憧れたんです、これしかないなーって」
ヴィヴィア「そうなんだー、ふふ」

ヴィヴィアは、にっこりと微笑みました。

シルヴィア「うーん、でも、私としては、ヴィヴィアさんとベアトリクスさんが剣術道場に居る方が意外です」
ヴィヴィア「うん、実はね、私達も騎士を目指してるんだ」
シルヴィア「そうなんですか!?」
ヴィヴィア「私にも、人を守る力があるんだなって…そう教えてくれたのは、ラルちゃんと、あとシルヴィアさんなんだよ?」
シルヴィア「えっあっ…あ!ラルの事助けてくれたんですもんね!…でも、私も?」
ヴィヴィア「うん、あの時、シルヴィアさんが沢山感謝してくれて、とっても嬉しかったから…騎士になれば、またあんな笑顔が見れるかなって」
シルヴィア「そんなー…何だか、こそばゆいです」
ヴィヴィア「ふふふ、あ、あと、ベアトリクスさんは、私につきあって…と言うか、あの子も、夢を求めて色々迷ってたみたい」
シルヴィア「そうなんですか?」
ヴィヴィア「うん、でもあの子は、正義感も強いし、まっすぐだし、絶対、皆が憧れるすごい騎士になるって思ってるんだ」
シルヴィア「へええー…」

その時、ベアトリクスが、スチュアートに視線を向けている事にシルヴィアは気付きました。

ベアトリクス「貴方、どこかで会ってますわね」
スチュアート「えっや…だれですかーしりませんねー」
ベアトリクス「目をざばんざばん泳がせながら言うセリフではなくてね…まあいいわ、近いうちにあばいて差し上げます…で、シルヴィアさん!」
シルヴィア 「わひっ!」

ベアトリクスは、試合のオーダーが書かれた紙をシルヴィアに突き出しました。

ベアトリクス「貴女が大将になってますわね!すなわち、私と対戦するという事でしてよ!」
シルヴィア 「え、あ、えっ!」
ベアトリクス「と言う事は、さぞかし…んふふ、血が沸きますわ、これは伝説に残る美女対決になりましてよ、んふふ、ほーほっほ!」

ベアトリクスは、上機嫌で去っていきました。

シルヴィア「…あの、ベアトリクスさんって強いんですか?」
ヴィヴィア「うん、相当強いと思う」
シルヴィア「ああ、勝つチャンスが…」

シルヴィアは、ディン・ゴシームのように丸まってしまいました。

ヴィヴィア「あ、もう、シルヴィアさん」
ラル    「ねえ、ところで、私の対戦相手ってヴィヴィアさんになるの?」
ヴィヴィア「えーと、そー…なるみたいだね」
ラル    「やだぁ!つよそう!」

ラルも、ディン・ゴシームのように丸まってしまいました。

スチュアート「あーほらもう、丸まってないでさ、2人とも半年間すごく頑張ったんだし、何とかなるよ!」
ヴィヴィア 「うん、私も、それにベアトリクスさんも、ずっと頑張ってきたから、お互いにその成果を見せよう!勝ち負けとか気にせずに!」
ラル     「う、うん!」
シルヴィア 「…そうですね!」

スチュアートとヴィヴィアは、うなずきました。

ヴィヴィア 「それにしても…」
スチュアート「ん?」
ヴィヴィア 「いえ、どこかで見た事あるな、と…」
スチュアート「ないない!全然見た事ない!心当たりナッシング!」


そして一行は、バドルストーンへたどり着きました。
バドルストーンは、ジパン式のルーサーフォードとは対照的に、フィオナで主流のゴシック式の建造物で
300年前は、エムブラースク時代の騎士が、鍛錬に利用していた場所としても有名です。
また、現在でも、バドルストーンから巣立って騎士になる門弟も多数おり、フィオナ王国騎士団第5隊隊長のウィンセント=プレザンスもその一人です。
ヴィヴィアとベアトリクスに、この道場へ入門する事を勧めたのは、彼だったのです。

シルヴィア 「わー、綺麗なところですね」
ヴィヴィア 「でしょ?ちょっと自慢」
ルイス   「さて、では皆様、着いてそうそうなんですが、この後の予定をお話したいと思います。
        まずお茶などで、おもてなしをしたいところですが、その後試合をするとなると体に障りますので、それは試合後と言う事に。
        用意の時間などを考えて、今から1時間後に試合を始めたいと思いますが、よろしいですか?」
エレアノール「構いません、こちらを慮って頂き、恐縮ですわ」
ルイス    「いえいえ、では、更衣室の案内は、このアビーに任せたいと思います。では、アビー?」
アビー    「はい!」

バドルストーンの門弟の中から、身長130cm位の、小柄な女の子が出てきました。

アビー    「では、皆様をご案内致します!私についてきてください!」
エレアノール「皆、行儀良くするのよ、アビーちゃんは、先生のお孫さんなんだからね」
ルイス    「いえいえ、ここでは他の門弟と同じ扱いですから、お気遣いして頂かなくても大丈夫ですよ」

アビーの先導によって、7人は更衣室を目指しました。

シルヴィア「それにしても、綺麗な道場ですね、床も壁もピッカピカ」
アビー   「ふふふー、そうでしょう、当番制で、皆で一生懸命お掃除してますからね!」
シーヴァー 「ここはね、ご飯もおいしいんだよ、しかもそれも当番制、だったよね?アビーちゃん」
アビー   「そうです!だから料理ヘタな人は居ないんですよー」

シルヴィアは、「ベアトリクスさんも料理するのかな?」と思いましたが
純粋そうなアビーちゃんが言うのだから、例外はないのだろうと判断しました。

ラル 「ねえ、アビーちゃんも剣術するの?」
アビー「はい!大きい剣は持てませんし、まだまだ弱いけど、いつか強くなりますよ!」

シルヴィアは、一瞬「対戦相手がこの子なら良いのに」と思ってしまいましたが
頭をブンブンと振って、すぐにその考えを追い出しました。
そう話している内に、一行は、「更衣室」と書かれたドアの前に着きました。

アビー   「男の子は右、女の子は左です。私はここで待ってますね!」
エイミー  「はーい、なるべく早く着替えてくるね。男子!黙って覗かないように!覗くなら許可を取ってから!」
ロデリック 「なに、許可がいるのかよ、めんどくさいシステムだな」
ジェンソン 「君はアポなしで覗く気か?事前申請して覗くのが社会のルールだろ?」
スチュアート「…いや、もう、どうでも良いけど早く着替えようや…」
シーヴァー 「そうだね…」
シルヴィア 「…」
ラル     「…」

7人は、ルーサーフォードの道着に着替えました。
シルヴィアは、着慣れた道着ですが、なんだか今は、この道着を着た自分に誇らしさを感じていました。
「自分が所属する道場の代表である」と言う事実が、ここに来て、シルヴィアに勇気を与えたのです。
もちろんそれは、ラルもエイミーも同じで、シルヴィアとラル、エイミーは、お互い目配せで、気持ちを確認しました。
恐らく、男子の方でも同じような気持ちの統一があったと見え、更衣室から出てきた男子4人は
着替える前とは別格の「気持ちの強さ」が、ありありとシルヴィア達には感じ取れ、とても頼もしく思いました。

アビー    「おお!皆様、気合入ってますね!」
スチュアート「ま、やっぱし、これ着ると気持ち入るよね」
エイミー   「そうだね〜」
シーヴァー 「よし、皆、円陣組もうか」
ロデリック 「お、いいな」
ジェンソン 「じゃ、掛け声は大将のシルヴィアね」
シルヴィア 「え、私!?」
ラル     「えへへ、いいね」
シルヴィア 「うーもう、仕方ないなあ」

7人は円陣を組み、シルヴィアの掛け声を待ちました。

シルヴィア「え、と、よし、みんな、今までの鍛錬の成果を出そう!やるぞー!」
全員    「おお!」

再び、アビーの先導で、7人が道場に戻ってくると、エレアノールが、試合用の剣と、メタルジャケットとメタルヘルムを用意して待っていました。

ラル     「これ、なに?」
エレアノール「んー、ま、一口に言えば、自動判定機かしらね」
シルヴィア 「自動判定機?」
シーヴァー 「うん、このジャケットやヘルムに、この剣が触れると…ほら、あのランプが点くでしょ?」

シーヴァーが指を指した先には、「ランプ」が3つ付いたパネルが2個あり、左のパネルのランプが1つ点いていました。

シーヴァー 「目視で一本入ったかどうかって、結構判断が難しいところがあるからね。
        このジャケットとヘルムに有効打が入ると、ランプが点いて、ポイントになるんだよ。
        今回はランプ3つだから、戦ってる間に、先に3回有効打を入れれば勝ちってとこかな?」
シルヴィア 「一本一本で区切らないんですか?」
シーヴァー 「うん、ジャケットが出る前は区切ってたんだけどね、今はより実戦に近くって事で、区切らなくなったんだよ」
ラル     「へー」
ロデリック  「まー実戦なら1発で死ぬわけだから、本当なら1本勝負なんだろうけどな」
エイミー   「それ、『るろうに真剣』の鉄動電十太が言ってて、すごい負けフラグだよ?」
ジェンソン  「ござる」
ラル     「ねー、尻尾ジャケットに入んない…」
スチュアート「そう言えば尻尾あったんだっけ…」
エレアノール「あ、ラルさんはそれじゃないわ、ちゃんと穴が空いたの用意してるから」

そうして、ルーサーフォード、バドルストーン両者共に、出場する7人はジャケットとヘルムを着用し、いよいよ試合の時となりました。

先鋒エイミーの武器はカタナ、相手はロングソードと盾のキャンディスです。
キャンディスの盾による防御は鉄壁に思えましたが、エイミーの身軽さから繰り出される、トリッキーな攻撃に対応出来なくなり
最初こそキャンディスが1本取ったものの、その後連続してエイミーが3本取り、先鋒戦はエイミーが勝ちました。

エイミー 「ふう、やったね!」
ジェンソン「よ!さすが俺の彼女!」
エイミー 「まだ返事してないでしょ!」
ジェンソン「よし、じゃ次鋒戦に勝ったら付き合ってくれ!約束!」
エイミー 「うーん、まあ考えとく」

そして次鋒ジェンソン、武器はロングソード、相手のジュシアもロングソードと同条件で、ジェンソン、これは負けられません。
お互い一進一退の攻防が続き、試合は長時間の様相を見せましたが、スタミナで若干劣っていたジェンソンの攻撃のペースが、途中でガクンと落ちてしまい
その隙にジュシアが3本続けざまに連取、ジェンソンは残念ながら負けてしまいました。

ジェンソン「あーくそ!負けちまった!」
エイミー 「うん、でもかっこよかったよ」
ジェンソン「お、と言う事は!?」
エイミー 「んーま、良いかな…」
ジェンソン「よっしゃ!」

その場に居た門弟達は、「あーあ」となりながらも、「お幸せに」と言う気持ちになっていました。
次は五将、ロデリックの出番です。

ロデリック「よっしゃあ!だぁー!」

ロデリック、武器は、ツーハンドソードをさらに重く、長くした、へヴィツーハンドソード。
「剛腕」、ロデリックに相応しい、迫力のある武器です。
そして相手もこれまた超重量級、ロデリックと同じくヘヴィツーハンドソード使いのマクシミリアンです。

ロデリック  「おらららぁー!!おらおらおらおらおら!!」
マクシミリアン「どらららぁー!!どらどらどらどらどら!!」

お互い、もう、技らしき技は使わず、とにかく攻撃あるのみ、へヴィーツーハンドソードを、まるで軽量のロングソードのように振り回し
打ち合いは百合にもなるかと思われましたが、お互いここでスタミナ切れ、同時にドシャッと床に倒れこみました。
勝敗はと言うと、ランプを確認すると、2対3で、マクシミリアンが先に有効打を3つ入れていたようです。

スチュアート「おつかれーい」
ロデリック 「だぁー、ダメだったか!」
ラル     「でもすごいね、あんなビュンビュン振り回せるもんなんだね…」
ロデリック 「まぁ、俺は前から腕っ節だけでやってるからな」
スチュアート「よし、じゃ次は俺だね」
シーヴァー 「頼むよー、ぼくのライバル」
スチュアート「へいへーい」

中堅はスチュアート、武器は通常の重量、長さのツーハンドソードです。
相手のレジナルドは、右手にカタナ、左手にカタナより少し短い、「コダチ」と呼ばれるタチを持った二刀流スタイルです。

スチュアート「お、スタイル変えたの?レジナルドさん。前は一刀だったのに」
レジナルド 「まぁね、君に負けてからちょっとね」
スチュアート「へえ、怖いなぁ…」
レジナルド 「ふふ、行くよ!」

レジナルドは、開始の合図と同時に、コダチで突き、そしてカタナでの連撃を繰り出しました。
手数では、明らかにスチュアートに分が悪く、避けるので精一杯…にシルヴィアには見えました。

シーヴァー「やっぱりすごいね、スチュアート君は」
シルヴィア「え?」
シーヴァー「全部の攻撃を紙一重で避けてる、見切りが凄く上手いんだよね」

シルヴィアもよくよく見ると、スチュアートは、剣で弾くでもなく、「当たりそうで当たらない」、柳のような回避を繰り返し
隙を見つけては確実にポイントを奪い、いつの間にか2対0にレジナルドを追い込んでいました。

シルヴィア「なんだか良く分からないけど、すごいです」
シーヴァー「彼は冒険者として活動してるし、実戦なれしてるからかな、ぼく達の剣とは少し違うような気がするね」

そう話している間に、スチュアートが最後のポイントを奪い、3対0でスチュアートが勝ちました。

レジナルド 「ふぅ、また負けたか…やっぱり君は恐ろしく強いな」
スチュアート「でも、おととしより余裕全然なかったよ、次はやばいかもね」
レジナルド 「はは、ま、次は勝たせてもらうよ」

スチュアートは、シルヴィア達に軽くガッツポーズをし、元の席に戻りました。

シルヴィア 「強いですねー…かっこよかったですよ!」
スチュアート「ありがと!さーて次は、瞬天のシーヴァーだね」
シーヴァー 「おいおい、通り名つけるのはやめてよ、恥ずかしいなあ」
シルヴィア 「瞬天…あ、もしかして、皆通り名とかあるんですか?」
スチュアート「あるある、エイミーは「舞踏」、ジェンソンは「孤高」、ロデリックは「剛腕」、俺はなんか知らないけど「臥竜」、で 、シーヴァーが「瞬天」って感じかな」
ラル     「へー、何かかっこいいね」
スチュアート「ちなみに、シルヴィアさんにもラルさんにも、もうあるんだよ、知らなかった?」
シルヴィア 「ええ、ホントですか!?いつの間に!?」
スチュアート「と言うか、師範が入門時に全員につけてるんだけどね、ほら、向いてる武器とか見抜いたじゃない、その時に決めてるらしいよ」
ラル     「で、で?私達は何て言うの?」
スチュアート「んーとね、ラルさんは「万象」で、シルヴィアさんは…って、もう試合始まってるじゃん!」
ラル     「わ!ほんとだ!」

シルヴィアとラルが試合状況に目を向けると、シーヴァーはロングソードを腰に差したまま立っており
相手のユーリアンは、ブロードソードを八相に構え、そしてシーヴァーの脳天めがけて振り下ろしました。
瞬間、ユーリアンの攻撃は空振りに終わり、シーヴァーは相手の後方1メートルの位置におり
ポイント表示のランプは、3対0でシーヴァーの勝利を示していました。

ラル     「ええ!?」
シルヴィア 「え、あれ、どうなったんですか!?」
スチュアート「うーん、簡単に言うと、相手の攻撃を避けて素早く7連打を浴びせた…かな」
シーヴァー 「いや、6連だよ、1発ミスった」
スチュアート「あれマジ?と言うか3連で良いんだよ!かっこつけ!」
シーヴァー 「あはは、クセでさ…」

シルヴィアとラルは、「自分達と、この2人は次元が違う」と、はっきり自覚しました。
しかし、その胸には、何か熱いものがこみ上げていました。
言葉に表すのは難しくても、その気持ちは、確実にシルヴィアとラルを、より前へ進める動機になっていました。

ラル     「次は…私だね!」
シルヴィア「怪我だけはしないようにね!」
ラル     「だいじょーぶ!ちょっと勝ってくる!」

ラルは、エレアノールから試合用の「クレイモア」を受け取りました。
受け取って分かりましたが、材質は恐らく合金で、重量はそれなりにあるものの
刃の鋭さは全くなく、「斬る」事は、不可能に出来ていました。

皆が、ためらわず剣を振れていたのは、「斬る」事と「斬られる」事の心配をしなくて良いと言う事が、影響していたのかもしれません。
そして、相手…ヴィヴィアが、ラルの前に現れました。
武器は、ロングソードを二本腰に差している事から、恐らく二刀流だと察せられました。

ヴィヴィア「それじゃ、行くよ!ラルちゃん!」
ラル    「よし、こーい!」

ヴィヴィアは、小手調べに右のロングソードで左薙ぎにラルに斬りかかりました。
それをはじくと、いつの間にか左のロングソードが右胴を薙いできたため、ラルは後ろに飛び避け
後ろに飛んだ反動を使い、前にジャンプして突きを繰り出しました。

ヴィヴィア「やる!でも残念!」

ヴィヴィアは、体を右回転し突きを避け、右のロングソードでラルの右胴を、左のロングソードで右側頭部を攻撃し、一気に2ポイント奪いました。

ラル    「うっ!」
シルヴィア「ラルーッ!」

ラルには、もうポイントの余裕はありません。
しかし、それが背水の陣となったのか、ラルの判断力は上昇、右側頭部を攻撃したヴィヴィアの重心が右足に移ったのを見て取り
突きの体勢から、刃を右に薙ぎ、ヴィヴィアの前頭部を捉え、1ポイントを奪取!…したかに思えましたが
ヴィヴィアは、後ろに倒れこむようにギリギリで刃を避け、なんとそのままバク転。

今度はヴィヴィアが、先程ラルにやられたように、反動を利用して突きを繰り出しました。
右薙ぎで剣の遠心力に体を持っていかれていたラルは、この突きをかわす余裕はなく、ヴィヴィアの突きはラルの胴を捉え
0対3のポイントで、ヴィヴィアが勝利を獲得しました。

ラル    「ふゃー!負けちゃった!やっぱり強いなぁ」
ヴィヴィア「ふぅぅ、でも、剣術歴半年だったよね、この先どんどん強くなるなって感じたよ!」
ラル    「ありがと〜、またやろうね」
ヴィヴィア「もちろん!」

ラルとヴィヴィアは、握手をして、お互いの陣営に戻りました。

シルヴィア 「ラル!大丈夫!?怪我ない!?」
ラル     「だ、大丈夫だよ〜、そんなあちこち撫で回さな…くすぐったきゃははははぃやぁーなんかだめぇー!」
エレアノール「はいはい、そこ、そういう行為は皆に見えないとこでやるようにしなさい、男子が興奮しちゃうわよ」
シルヴィア 「す、すみません、つい」
ロデリック 「俺はもうちょっと見てたかったけどな」
シルヴィア 「バカー!」

エレアノールは、スコアボードを見て言いました。

エレアノール「はい、じゃ次大将戦、今3-3だから、次で勝ち負けがきまりまーす、責任重大ね、あなた」
シルヴィア 「えっ、あっ、ええ!?あ、そうか…」

シルヴィアは、緊張で心がキュッと縮こまる感覚がしてきました。

エレアノール「…なんてね、勝ち負けはどちらでも、『今の自分に足りない物』を見つけるきっかけになってくれれば、師範としてはそれ以上望む事はないわ」
エイミー   「そうそう、私も今回ので結構見えたもん、シルヴィアも、そういうのを見つけるつもりで戦ってみるといいよ!」
ジェンソン  「戦ったら彼女が見つかりました、本当にありがとうございました」
エイミー   「バカ」
ロデリック 「俺もなー、力ばっかりじゃなくて技も磨こうと思ったよ」
スチュアート「俺は逆に力だなー、打ってもレジナルドさん全然よろめかなかったからね」
シーヴァー 「ぼくは、もっと正確さだね、実戦で1発ミスるのは大きいよ」
ラル     「私は…全部足りないと思うけど、対戦経験がないから、もっと対戦しなきゃって思った。
         シルヴィアも、戦えば絶対何か見つかるよ!勝っても負けても!」
シルヴィア 「うん…そうだね!」
エレアノール「じゃ、行ってらっしゃい!『守護』のシルヴィアさん!」

皆に背中を押され、シルヴィアは戦いの場へと赴きました。
そこには既にベアトリクスが居り、レイピアで華麗な舞を披露していました。

ベアトリクス「んふ、やっと来たわね…へえ?レイピア二刀流?いいわね、美しいわ」
シルヴィア 「まだ剣術半年の私ですけど…この戦いで何かを得るために、全力で行きます!」
ベアトリクス「いいわ!貴女に何が足りないのか、私が教えて差し上げますわ!」

そして、シルヴィアとベアトリクスの、戦いの火蓋が切って落とされました。
ベアトリクスの、「超」が付くほどの高速の突きを、シルヴィアは両手のレイピアを使い、懸命に弾き、いなし、ポイントを奪われまいとします。
自身が攻撃に回る機会が中々得られず、シルヴィアは焦りつつありましたが、その焦りを強い気持ちで制御し、チャンスをうかがいます。
ベアトリクスの突きは、そのスピードがどんどん増していきますが、シルヴィアは食らいついていき…いつの間にか道場は、どよめきに包まれていました。

ラル     「シルヴィアすごい、ベアトリクスさんの攻撃を全部防御してる」
エレアノール「だから『守護』なのよ。シルヴィアさんは、実を言うと、防御能力だけで言えば、とても剣術歴半年なんてものじゃないの」
スチュアート「え、マジですか?」
エレアノール「そ、あの剣は…と言うか、あの子、『守る』と言う面において、すごく高い能力を発揮するのよ。
         まるで、最初から、自分や誰かを守るために生まれてきたみたいな、そんな感じに見て取れるのよね」
ラル     「シルヴィア…」

ベアトリクスの突きの速度の加速はとどまる事を知らず、まるで狂ったかのような連撃を、シルヴィアは防御し続けます。

ベアトリクス 「(くっこの子…!)」
エレアノール「…!」

ベアトリクスは、突然攻撃の手を止めました。
守勢だったシルヴィアは、「今が好機!」と思いましたが、ベアトリクスが3歩後ろに下がり
前屈みの特殊な構えをしたため、シルヴィアは本能的に「恐ろしい技が来る」と感じ、精神を研ぎ澄ませ、防御の構えをしました。
しかし、次の瞬間、ベアトリクスは、シルヴィアの視界から消え
気付いた時には、シルヴィアの2メートル後方にベアトリクスは移動しており…ポイントのランプは、0対3で、ベアトリクスの勝ちを示していました。

スチュアート「瞬天!?」
シーヴァー 「いや、ぼくよりもっと…はるかに速いよ」
シルヴィア 「…え、あ!?えーっ!?私の負け!?」

状況が飲み込めないシルヴィアに、ラルが駆け寄り、抱きつきました。

ラル    「シルヴィア!すごかったよ!シルヴィア!」
シルヴィア「ラル…うん、ありがと!ラル!」

そこに、ベアトリクスも近づいてきました。

ベアトリクス「ふー、貴女、可憐なのに、中身は剛胆ですわね」
シルヴィア 「ベアトリクスさん…」
ベアトリクス「おじい様から受け継いだ奥義、つい使っちゃったわ…ヴィヴィアにも見せた事なくてよ?
        いいわ、今日から貴女も、ヴィヴィアと同じく、私のライバル、乗り越えるべき相手として認めますわ」
シルヴィア 「そ、そんな、私なんか!」
ベアトリクス「いーの、私が認めたのだから、貴女も認めなさい!…はい、握手!」
シルヴィア 「あ…は、はい!」

ベアトリクスが差し出した手を、シルヴィアは、おずおずと、しかし、誇りを持ちながら、しっかりと握りました。
バドルストーン道場は、割れんばかりの拍手に包まれました。
道場としての成績は、3対4でバドルストーンが勝ち、ルーサーフォードの負けとなりましたが
その場に居た全員にとって、もはやそれは、どうでも良い事となっていました。

ルイス    「いや、すばらしいものを見せて頂きました…さすがルーサーフォードですな」
エレアノール「いえ先生、『ルーサーフォード』ではなく、『あの子達』ですよ」
ルイス    「…なるほど…ふふ、そうですね…さて」

ルイスは、門弟達の前に歩み寄りました。

ルイス  「皆様、お疲れ様です。試合に出た者も、出なかった者も、それぞれがとても大きな収穫を得た事でしょう。
       お互いの鍛錬の成果を、そして次の目標を定めるためにも、また機会を設けて試合をしたいものです。
       …さて、それでは、粗末ではありますが、食事を用意しておりますので、召し上がっていってください」
ロデリック「お、やった!ここの飯は旨いからなぁ、楽しみだ」
アビー  「それでは、私が食堂までご案内します!」

ルーサーフォードの門弟も、バドルストーンの門弟も、大食堂で一緒に食事を摂り、談笑し、友好を深めました。
シルヴィアもラルも、今まで食べた食事の中でも、格別においしいと思いました。


その晩、シルヴィアは、夢の中で誰かと戦っていました。
赤い鎧を纏い、赤い剣を持った、見覚えのない人物でした。
夢の中のシルヴィアは、なぜか「フィオナ王国騎士団の隊長専用鎧」を着ていました。
もしかしたらこの時、シルヴィアは、将来戦う事になる、「ある人物」の思念に触れていたのかもしれません。



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