シルヴィアは、教室でイラストを描いていました。

シルヴィアとラルが通うフィオナ王立アイテリエー高等学校は、いよいよ文化祭の季節になりました。
アイテリエー高等学校では、2年生と3年生が中心となり、まだ学校に完全に慣れていない1年生をもてなす意味も込め
それぞれのクラスで催し物をこぞって開催し、1年生とその家族、また一般の人が、そのイベントで遊ぶと言うシステムになっています。
シルヴィアも、去年は1年生でしたので、クラスの友達とあちこちを見て回って楽しんだのですが
今年は2年生、自分達がイベントを開催する立場になったのです。

クラスで「何を開催するか」の議論が行われている中、シルヴィアは、近頃、若者に人気のゲーム
「にゃん隊コレクション」、略して「にゃんコレ」のイラストをノートに描いていました。
「にゃんコレ」は、人間に擬人化したネコ娘に剣や槍などの武装を施し、深海から侵略してくるサカナ娘軍団を相手に戦うシミュレーションゲームで
プレイヤーは、ネコ娘の編隊を組んだり、どの海域に進出させるかを決める、「指揮官」の役目を担うのです。

シルヴィアは、遠く離れたギリス王国で生まれ、フィオナ王国にやってきた帰国子女の三毛猫娘、「ミケネコンゴー」がお気に入りです。
基本的に真面目なシルヴィアですが、あまりでしゃばるのが好きではないため
「決まったら真面目に参加すればいいや」と言うスタンスで、イラストを描いていたのです。

男子生徒A「まぁ、無難に喫茶店とかが良いんじゃないの?」
女子生徒A「それはそれで良いけど、他のクラスと差別化したいよね」
男子生徒A「そうねー…ん?シルヴィアさんは何やってるの?」

シルヴィアは、夢中で「ミケネコンゴー」のイラストを描いていたため、ギクリとして、ノートを腕で隠しました。

シルヴィア 「え!あ、あ、何もしてないです!何もやましくないです!」
女子生徒A「ほんとー?何か今ノートにかわいいイラスト見えたよぉ〜?」

女子生徒は、シルヴィアが腕で隠したノートを、見せまいと抵抗する彼女に上手くフェイントをかけ、サッと取りました。

シルヴィア 「あー!ちょっ!だめぇ!死ぬ…!?」
女子生徒A「いや死なないから…なるほど、「ミケネコンゴー」かぁ、上手いね」

シルヴィアは、真っ赤にした顔を手で覆って、頭から湯気が出ていました。

男子生徒A「…あ、でもそれアリなんじゃない?「にゃんコレ喫茶」みたいな、皆「にゃんコレ」やってるでしょ?」
女子生徒B「あ、アタシもやってるー」
女子生徒C「コスプレとかして?良いけど、男子はどうするの?」
女子生徒D「そりゃ男子もコスプレするでしょー…女子がネコで、男子がサカナ側とか」
男子生徒B「えー…サカナ側も女の子なんだけど」
女子生徒D「いいじゃん」
男子生徒B「いいならいいんだけど」

シルヴィアが湯気を出している間に、あれよあれよと話は進んでしまい
彼女が籍を置いている2年A組は、「にゃんコレ喫茶」を開くことになりました。

2年A組は39人居るのですが、効率化を考え、男女で別れ、女子は女子で、どの「にゃん娘(にゃんむす)」のコスプレをするか話し合い
男子も、どの「ぎょ娘(ぎょむす)」のコスプレをするか話し合いました。
しかしながら、「ミケネコンゴー」のイラストを描き、「にゃんコレ喫茶」のきっかけとなったシルヴィアは
当然と言えばそうですが、最初から「ミケネコンゴー」の役が割り振られていたため
車座になって話し合う女子の中、一人ぼやーっと話を聞いているだけとなってしまいました。

大体、誰がどのにゃん娘をやるか決まってきたところで、暇なシルヴィアが、男子の方に進捗状況を聞きに行くと
結局、くじ引きで決めてしまったらしく、露出が多かったりするキャラが割り振られた男子は、一様に困り顔をしていました。

シルヴィア「ところで、コスプレの衣装ってどうします?手作り?」
男子生徒 「そうか、どうしようか、あんまり日数もないしね」

それを聞いた女子生徒の一人が、手を挙げました。

女子生徒「あ、はいはーい、私そういう衣装レンタル出来るとこ知ってる!出来も良いし、しかも安いし!」
男子生徒「ぎょ娘もあるの?」
女子生徒「あるよ」
男子生徒「そう…」

同時に、喫茶店での料理の素材などは、そちらに詳しい男子生徒がルートの確保を申し出たため、こちらの問題もなし。
接客と調理は、交代制でという事になりました。
元々2年A組は、生徒同士の仲が良く、トラブルの起こる要因がほとんどないため
他のクラスに比べて、驚くほどスムーズに話が進みました。
そして、コスチュームをレンタル出来る店に、帰り道、有志(シルヴィア含む)で視察に行き、予約をすると言う事で、話し合いは終わりました。

シルヴィア「ミケネコンゴーとか、ヒエイエネコとかは分かりますけど、スフィンニャンとかもあるんですか?あれほぼ裸…」
女子生徒 「え、あるよ、一応…まぁ私達あれはやらないけど」
シルヴィア「あるんだ…」
男子生徒 「あ、あの店?」
女子生徒 「うん」

その店には、古今東西のマンガやアニメ、ゲームのコスチュームがずらりとならんでおり
「にゃんコレ」のコスチュームも、しっかりと飾られていました。

男子生徒 「ほえー、いっぱいあるのね」
女子生徒 「うん、で、ぎょ娘はあっち」
シルヴィア「着てみたらどうですか?何担当か分かりませんけど…」
男子生徒 「えー…ボク「デストロイワシ」なんだけど」

「デストロイワシ」は、序盤に出てくるぎょ娘で、小さい体で素早く駆け回る、人気のキャラです。

女子生徒「あるよ、デストロイワシ」
男子生徒「あるんだ…しょうがないか、当日着るんだしなぁ…合うかどうか試しとくか」

男子生徒が「デストロイワシ」に着替えている間、シルヴィア達は、にゃん娘とぎょ娘のコスチューム39着分の予約を店員に申し出、店側も、それに快諾しました。
そして、男子生徒が、試着室から出てきました。

シルヴィア「おお!」
女子生徒 「これは、なかなか…」

この男子生徒は、小柄だった事もあり、「デストロイワシ」にぴったりと役がハマり、シルヴィア達は関心してしまいました。

男子生徒 「気持ち悪くない?」
シルヴィア「いえいえ、全然、むしろ凄くかわいいです」
男子生徒 「なら良いんだけど…と言うかボクばっかりじゃなくて、2人も着てよ!罰ゲームみたい!」
女子生徒 「ええ、まぁ良いけど…私はナカニャンだったかな」

シルヴィアはマゴマゴしていましたが、女子生徒からミケネコンゴーの衣装を渡され、意を決して試着室へ入りました。
普段着慣れない構造の服に手間取りましたが、どうにかこうにか身につける事に成功し(ネコ耳も着けて)、試着室のカーテンを開けました。

男子生徒 「おお!」
女子生徒 「こ、これはイケる…!くやしい!でもかわいい!ビクンビクン」
シルヴィア「ビクンビクンて…もう、あ、でもナカニャンの服似合ってますね」
女子生徒 「きゃはっ☆にゃん隊のアイドル!ナカニャンだよー!よっろしくー!」
男子生徒 「ワァ」
女子生徒 「ワァって何!」

ナカニャンがデストロイワシをぴしゃぴしゃしていると
そこに、遠くメリカ共和国からフィオナ王国の観光に来ていた、メリカ人の男性が通りかかりました。

男性「おお!キュート!フィオナの女の子達はかわいいデスネ!」
3人 「…」


文化祭の開催は10日後、シルヴィア達2年A組の生徒は、会場の飾り付けをしたり
フィオナネット(フィオナ王国のパソコンネットワーク)に情報を載せたり、余念なく準備を進めました。
そのサイトを見た人の中には、あの人達も居て…。

??「お、メール着たけど、今年のアイテリエーの文化祭で、「にゃんコレ喫茶」なんてやるらしいよ」
??「そうですか、行くのですか?」
??「興味あるしね、君も行くだろ?」
??「そうですね…行きますか」

??「む!この美しい衣装姿…捨て置けませんわ!」

??「あれ、これシルヴィアさんじゃん!からかいに行くかー、ははは」

それぞれの思惑を胸に、ついに文化祭は開催されました。


アイテリエー高等学校の文化祭は、関係者はもとより、一般市民も自由に遊べるため
子供が友達と一緒に来たり、暇な人が立ち寄ったり、カップルや家族連れで遊びに来る人などで、とても盛況になります。
当然、「にゃんコレ喫茶」の2年A組も、入れ替わり立ち代わり人が訪れ、接客も調理も、大忙しでした。

男性客        「あ、オレ「ハルニャ」ちゃんと写真撮りたいー」
ハルニャ      「はい、ハルニャはここに居ます!」
女性客        「それじゃ、私は「クーボカツヲキュー」君と撮りたいー!」
クーボカツヲキュー「ヲ!」

シルヴィア  「大忙しですねー!」
クマニャン  「ほんと忙しいクマー」
ニャミダレ   「あ、ミケネコンゴーさん!あちらでお客様がお呼びですよ!」
シルヴィア  「はいはーい!」
ヒエイエネコ 「ミケネコお姉さま!今はミケネコンゴーなんですから、キャラを崩さないようにしてください!」
ミケネコンゴー「わ、分かったデース!」

ミケネコンゴーは、自分を呼んでいると言うお客様の下へ向かいました。

ミケネコンゴー「ヘーイお客さん!ご注文はなんデスかー!」
ラル       「ぶぷーっ!」
ミケネコンゴー「ノォォォォォ!」

ミケネコンゴーは、思わずカウンターの下に潜りこんでしまいました。
よく考えたら、ラルとミケネコンゴーは同じ学校だったため、ラルがこの喫茶店に来る事は、むしろ必然であると言えるのです。
ラルは、顔中を小悪魔的な笑顔でいっぱいにして、ミケネコンゴーに話しかけました。

ラル「ミケネコンゴーちゃん、チョコパフェひとつー!」

ミケネコンゴーは、何とか気持ちを立て直し、立ち上がって応えました。

ミケネコンゴー「イエス!私の料理の実力、見せてあげるネ!」

ミケネコンゴーは、今の時間は調理ではないのですが、気が動転していたため
自分でチョコパフェを作ってしまい、それをラルの元へと運んでいきました。
しかし、ラルの元へ戻ってみると、お客様は3人に増えており、どちらもミケネコンゴーが知っている人だったのです。

アルヴィン「あ、久しぶり…」
ブライアン「これはどうも…」

ミケネコンゴーは、もはやどうして良いか分からなくなり、とりあえずラルの前にチョコパフェを置きました。

ラル「えへへ、びっくりした?」

ミケネコンゴーは、言葉に詰まりましたが、何とか声を絞り出しました。

ミケネコンゴー 「ヘイお客さん!これは、一体どういう事デース!?」
アルヴィン   「あ、今日はそういうキャラなんだ」
ブライアン   「なるほど…ミケネコンゴーですか」

ラルは、ニコニコしながら言いました。

ラル       「いやー、たまーにアルヴィンさんに勉強の事とかでメールしてたんだけど
          「にゃんコレ」にもハマってるって聞いて、誘ってみたんだー。
          そしたらブライアンさんもプレイしてるって聞いたから、それなら3人でみたいな」
ミケネコンゴー「そうなんデスか…ブライアンさんもプレイしてるって、意外デース」
ブライアン   「まあ、私の周りでも話題ですしね、試しにプレイしてみましたら、なかなかどうして、これが面白い」
アルヴィン   「俺はニャタゴンが好きなんだけど、ブライアンはなんだっけ?」
ブライアン   「ニャカオですね」
ラル       「ニャカオ系良いよね、私はマニャが好き」

ミケネコンゴーは、準備室にニャカオとニャタゴンが居る事を思い出しました。

ミケネコンゴー「ンーそれなら、今ニャカオとニャタゴンが奥に居るから、呼んできマスカ?」
アルヴィン   「あ、そうなの?それじゃお願いしちゃおうかな」
ラル       「マニャは居ないの?」
ミケネコンゴー「マニャは今調理デース!後15分で接客に回るはずデスから、待っててネ!」

ミケネコンゴーは、準備室のニャカオとニャタゴンに声をかけ、ついでに自分は衣装崩れなどを直す事にしました。
ブラシで髪をとかしていると、ニャタゴンの「ニャンニャカニャーン♪」と言う声が聞こえてきたため、存外張り切っている事が分かりました。

再び接客に戻ると、ラル達の相手は、ニャカオとニャタゴンがしていたため、そちらは任せて
入り口で勝手が分からず、辺りを見回している女の子を見つけたため、こちらの相手をする事にしました。

ミケネコンゴー「ヘイお客さん!どうしまシタ?お席なら、こちらが空いてマ…」
ベアトリクス  「…シルヴィアさんでして?」
ミケネコンゴー「あ、はい…あ、ちが!私はミケネコンゴーデース!よろしくお願いシマース!」
ベアトリクス 「…写真より美しくてね、見に来た甲斐がありますわ!」
ミケネコンゴー「ありがとうございマース!」

ミケネコンゴーは、自分が、もう良く分からなくなっていました。

ベアトリクス  「そうそう、席でしてね…2席空いてまして?出来れば静かな席が良いのだけれど」
ミケネコンゴー「あ!ヴィヴィアさんと一緒デース?」
ベアトリクス  「いえ、ヴィヴィアは用事があってこれないの、今日は彼と一緒に来ましてよ」
ミケネコンゴー「オオ!『彼』デスか!…彼氏居るんデスか!?」

ミケネコンゴーは、ちょっとドキッとしました。

ベアトリクス  「彼氏と言うか、まあ良い話し相手でしてね、今のところはですけど」
ミケネコンゴー「そうデスか…それで、その彼はどこに居るデース?」
ベアトリクス  「えーと…あ、来ましたわ、彼でしてよ、良い話し相手」

ベアトリクスが「彼」と指差した先をミケネコンゴーが見てみると、美形の男の子が、ベアトリクスを見つけて、小走りで近づいてくるのが分かりました。
その顔は、ミケネコンゴーも良く知っており、ルーサーフォードとバドルストーンの試合で三将を任された、シーヴァー=レインウォーターだったのです。

ミケネコンゴー「シーヴァーさんじゃないデスか!」
シーヴァー  「あ、シルヴィアさん!ここシルヴィアさんのとこだったんだね」
ベアトリクス  「今は『ミケネコンゴー』らしいですわ」
シーヴァー  「え?あー!そーなんだ、ここ『にゃんコレ喫茶』だっけ、あのゲームベアトリクスさんもやってたよね」
ベアトリクス  「たしなむ程度には、してますわね」

ミケネコンゴーは、2人が話をするきっかけが気になりましたが、とりあえずベアトリクスの要望の「静かな席」へ2人を案内しました。

ベアトリクス  「私は、紅茶をお願いしますわ」
シーヴァー   「僕はコーヒーがいいかな」
ミケネコンゴー「分かりまシター!少々お待ちくだサーイ!」

調理室で、ミケネコンゴーは、砂糖やミルクを入れるか入れないか聞くのを忘れてしまった事に気付き
仕方がないので、それぞれ小さいカップ容器をつけて持っていく事にしました。

ミケネコンゴー「お待たせしまシタ!紅茶とコーヒーデース!」
ベアトリクス  「ありがとう」
シーヴァー  「良い香りだね、おいしそう」
ミケネコンゴー「ありがとうございマース!」

ミケネコンゴーは、2人とも砂糖もミルクも使っていない事を確認し
「勝手に入れないで良かった」と安心しました。

ミケネコンゴー「ソー言えば、2人はいつからお付き合いしているんデース?」
ベアトリクス  「あの試合の後すぐですわ」
シーヴァー  「うん、僕らの技って、性質がすごく似てるじゃない、それで気になって話はじめた感じかな」
ミケネコンゴー「なるほどネ!」

ミケネコンゴーは、納得しました。

ベアトリクス「でも貴方、私と戦っても中々本気を出しませんわね」
シーヴァー 「いやーそんな事ないよ、ははは」
ベアトリクス「ふふ、全く、食えない方ですわね」

3人が談笑していると、クマニャンが近づいてきました。

クマニャン   「クマ!なにサボってるクマ!」
ミケネコンゴー「おーすみまセーン!今戻りマース!」
クマニャン   「全くもークマー」
ベアトリクス  「…」
クマニャン   「クマ?」

クマニャンは、ベアトリクスが自分を見つめている事に気付きました。

ベアトリクス  「なにコレ!かわいいですわ!なにコレ!」
クマニャン   「な、なでなでしないで欲しいクマー!ぬいぐるみじゃないクマー!」
ミケネコンゴー「それじゃ、私は仕事に戻りマース」
クマニャン   「助けるクマー!」

クマニャンを見捨てて、ミケネコンゴーは仕事に戻りました。
そろそろミケネコンゴーも、自分の役にハマってきており、お客さんと撮る写真撮影なども
積極的に色々なポーズでこなせるようになりましたし、こういうのも悪くないと思い始めていました。
ミケネコンゴーことシルヴィアは、決して内向的と言う訳ではなく、興味があるものには、強い意志を持ってズンズンと進むタイプなのです。

実を言うと、彼女のそういうところに惹かれて、恋心を抱く男子は少なくないのですが
シルヴィアの方が、そちらには奥手という事で、友達以上の関係に発展する事はありませんでした。
しかしながら、彼女も年頃の女の子、気になっている人が居ない訳でもありません。

その人は…。

ナカニャン   「ミケネコンゴーちゃーん、3番席、ご指名入ったよー!」
ミケネコンゴー「ハーイ…えっ」

3番席には、スチュアートが座っており、ミケネコンゴーに手をフリフリしていました。

ミケネコンゴー「無理無理無理無理無理!あれは無理!」
ナカニャン   「え、なに?どーしたの?」
ミケネコンゴー「だって、あれ…あの人は無理なの!」

ナカニャンは、ぴーんと来ました。

ナカニャン   「ふーんそうなの…じゃー私があの人もらっちゃうよー、イケメンだし〜」
ミケネコンゴー「えっ…」
ナカニャン   「あーでも良いのかな〜、ナカニャンは皆のナカニャンなのにな〜、でも寿引退ってのもいいかニャ〜ン」
ミケネコンゴー「…」
ナカニャン   「ま、いっかぁ!それじゃナカニャンは、あの人とスキャンダル〜」
ミケネコンゴー「ま、まってください!」
ナカニャン   「んー?どうしたのかな〜?」

ナカニャンは、顔を真っ赤にして今にも泣き出しそうなミケネコンゴーを見て、思わずニヤニヤしました。

ミケネコンゴー「私行きますので…」
ナカニャン   「そーお?良いけど…一応ミケネコンゴーなんだから、キャラは崩さないよーにね!」
ミケネコンゴー「分かったデース…」

ミケネコンゴーは、高鳴る胸を押さえられませんでしたが、懸命に勇気を絞り、スチュアートの座る3番席へ向かいました。

ミケネコンゴー「いらしゃっいマセー!ギリス生まれの帰国子女ミケネコンゴーデース!ご指名ありがとうございマース!」
スチュアート 「う、うん…ぶぷーっ!ダメだわらける!」

スチュアートは、机に突っ伏して声を殺して笑っていました。

ミケネコンゴー「な、な…なんなんデスかー!せっかく勇気を出して来たのに!ヒョーシ抜けしたデース!」
スチュアート 「あはは、いやごめん、フィオナネットでシルヴィアさんのコスプレ写真見て、面白そうだから来てみたんだけど、ほんとに面白かった」
ミケネコンゴー「ンモー、まぁ良いデスけど…今日は1人デース?」
スチュアート 「ありゃ、痛いとこ突くね!シーヴァーはあんなんだし、ロデリックはゲーセン行ってるし、ジェンソンはエイミーと回ってるしねー。
          あと、うちの学校って進学校だったりするから、あんまり遊ぶ余裕ある友達居ないんだなー、コレが」

ミケネコンゴーは、「なるほど」と思いましたが、一つ疑問が出ました。

ミケネコンゴー「あれ、スチュアートさんって、冒険者目指してるんデスよね、それなのに進学校デース?」
スチュアート 「いやー実は、うちの学校って成績さえ良ければ、出席日数そんなに取らなくても卒業出来るのね。
         クレメンスで働くこと多くてそんなに学校行けないから、ちょーど良くてね…こう見えて、意外と勉強頑張ってるよ、俺」
ミケネコンゴー「文武両道ってやつネ、かっこいいデース…けど、大丈夫デスか?」
スチュアート 「大丈夫大丈夫、道場でシルヴィアさんの顔見ると元気出たりするし」
ミケネコンゴー「えっ…」

ミケネコンゴーは、また顔が紅潮しました。

スチュアート 「えっ…いや、仲良い人に会うと元気出たりしない?」
ミケネコンゴー「え、あ、ええ、そーデスよね!あはははは!私も元気でマース!」

2人の様子を遠巻きに見ていたナカニャンは、「まだるっこしいなあ」と思いつつも
「堅物な美女」で有名なシルヴィアにも、ちゃんとそういう人が居る事を知り、なんだか安心しました。
そして何となく、シルヴィアに悪い虫が寄り付かないよう、友達と連携して守っていこうと思ったのでした。

アイテリエー高等学校の文化祭は、主催者側、参加者側、それぞれの絆を深め、盛況の内に幕を閉じました。
シルヴィアとスチュアートの仲は、表面上進展する事はなかったけれど
お互い、何か感ずるものがあったのではないかと、ナカニャンことアゼレア=ラヴレスは思いました。



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